医院開業にはどの程度の資金が必要なのでしょうか。
大まかな開業資金の額は、開業する形態(戸建て、テナント等)と、開業する場所を想定することである程度絞ることができます。
まずはご自身で開業をイメージし、明確な医院運用についてビジョンをふくらませてください。下表に開業する形態毎のメリット・デメリットを掲載しています。
戸建て(注文) |
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テナント戸建て |
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テナントビル診 |
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医療モール |
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承継 |
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上記表の様に、開業する形態や場所により人の流れや制約等が異なります。先ずは上記表の様な大まかな開業形態の違いを踏まえた上で医院開業に伴う資金計画を立てることをおすすめいたします。
医院開業までに必要となる資金は、医院そのものの開業形態により大きく変わってきます。例えば先代より医院を引き継ぐ場合(承継)、リフォームを考慮すると2,000万円~4,000万円のコストでスタートすることができるでしょう。一方、新規開業の場合は土地の有無や開業地の形態(戸建て、テナント)などにより必要となる資金は変わります。(下表をご覧ください)
種類 | 資金総額(目安) | |
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戸建て | 1億円以上 | 建設地(土地)により金額は大きく変わります |
テナント | 4,000~6,000万円 | ビル診、医療モールに入って開業 |
承継 | 2,000~4,000万円 | 全面改装、一部改装などリフォームの規模によって変動します |
医院開業に必要な資金(目安)を踏まえた上で、自己資金についても考えてみましょう。
まず、手持ちの資金を全額投入することはあまりおすすめできません。開業後の生活費や医院の運転資金、万が一のことも考慮し、預貯金はある程度の余裕をもって残す必要があります。開業したての頃は、患者さんの数が思うように増えないこともあり得るため、最低でも半年分の生活費、運転資金を手元に残しておきましょう。以下のグラフは開業された方の自己資金額についてアンケートをとったものです。
500万円~1,000万円未満 | 32% | |
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1,000万円~2,000万円未満 | 18% | |
2,000万円~3,000万円未満 | 24% | |
3,000万円以上 | 10% | |
無回答 | 16% |
もっとも多かったのは500万円から1,000万円未満。また、半数の方が自己資金額2,000万円未満で開業されています。2,000万円以下では例え承継であっても「リフォームができるかどうか」というラインで、つまるところ自己資金以外の費用については融資を受けることになります。
融資には「無担保」のものと「有担保」のものがあります。昨今は開業医に対する貸付条件が緩和され、無担保で融資を受けやすい傾向にあります。無担保融資の場合、借入金の上限が低く設定されていることが多いので注意が必要です。有担保の場合は一般的に土地を担保として融資を受けます。担保する土地がない場合でも国債や株式を担保に融資を受けることもできます。
国民生活金融公庫や福祉医療機構などの政府系金融機関による融資制度と地方公共団体の融資制度は要チェックです。これらの公的融資は民間の金融機関による融資プランよりも返済期間や金利において有利な傾向にあります。
また、親族からの借入を行う場合には贈与税が発生しないよう借用書を作成し、返済条件を明記しておきましょう。借用書の作成を怠ると「親族からの贈与」とみなされ、借入金は課税対象になります。なお、返済記録を残すためにも金融機関の口座自動引落しを利用しましょう。
公的融資の制度内容は以下の通りです。
機 関 | 使途・融資先 | 貸付対象 |
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国民生活金融公庫 | ・新たに事業を始めるために必要な資金 ・事業開始後に必要な資金 (中小企業向けの制度ではあるが、開業医も利用可能。女性や55歳以上の方には「女性、若者/シニア起業家資金」制度もある) |
開業資金 運転資金 設備資金 |
社会福祉・医療事業団 | 社会福祉の増進・医療の普及および向上を図るため、特別養護老人ホームなどの社会福祉施設の設置に必要な資金、およびクリニック、診療所、介護老人保健施設などの医療施設の設置に必要な資金の融資(貸付事業)を行っている | 新築資金 増改築資金 機器購入資金 ※独自基準で規定された診療所不足地域のみ対象 |
自治体の制度融資 | 各自治体で条件面に優れている融資があり、都道府県だけでなく、市町村によるものもある | 開業資金 設備資金 ※自治体制度によって異なる |
医師会提携融資 | 各医師会によって異なる | 設備資金 運転資金など |